これからマーケティングを始める方の基礎作りに、あるいは実務としてマーケティングをしてきているけれども、原点回帰して基礎を再確立したいという方に、読んでおくべき書籍3冊を紹介します。いずれも本質を説いているので、マーケティングを習得し、洗練させる上できっと役に立ちます。ベテランマーケターであっても、まだ読んでいないという方や、基本の型を思い出したい方に、ぜひ。部下や後進の育成にも便利でしょう。
『マーケティング22の法則』
最初の一冊はこの本です。マーケティングを始める際に何から読めばいいか、という質問を受けたときに必ずお薦めしています。アル・ライズ(最近ではリースと記述されることが多そうです)とジャック・トラウト共著の傑作古典で、私のマーケティングの原点でもあります。通常の視点とは違うものの見方をすることの重要性を学び、認識や知覚を重視する姿勢はパーセプションフロー・モデルを発想する起点ともなりました。
きわめて平易なのであっさり読み終えてしまうかもしれませんが、そのエッセンスはあらゆるマーケティングとブランディングの基盤となるでしょう。むしろ、マーケティングのほとんどの問題は、ここに書かれていることで解決できるのかもしれません。
特に第4の法則、「Marketing is not a battle of products, it’s a battle of perception. (マーケティングは商品の戦いではなく、知覚の戦いである)」は時代に依存しない、つまり人間の本質を捉えた箴言です。つい忘れてしまいがちですが、強く心に刻んでおくべき概念です。
本書を読む際に大事なのは、よく考え、できれば内容について議論をすること。喉ごしがいいのであっさり飲み込んでしまいがちですが、ちゃんと噛んで読むと滋養豊富です。議論の機会に恵まれなかったり、何を考えるべきか分からなかったりするときには、間をおいて二度、三度と読み直してみてください。その間に自身が変化していれば、新しい知見を見出すことができるかもしれません。
『アイデアのつくり方』
マーケティングをはじめるにあたって読むべき2冊目の本がこれです。私が過去に帰属したマーケティング組織では、これも課題図書に設定しました。本書の冒頭にも書かれているように、この本を読んだからといって必ずしもアイデアが溢れてくるわけではありません。でも、アイデア創出の仕組みが理解できると思います。「論理的思考力」と「創造的発想力」を別の能力のように捉える見方もあるかもしれませんが、本質的には(ともに思考技術なので)対立概念ではないことが理解できることでしょう。
中段で示されている概念も、主題とは直接関係していないものの至言です。「どんな技術を習得する場合にも、学ぶべき大切なことは第一に原理であり第二に方法である。これはアイデアを作りだす技術についても同じことである。」
自分がその方面に向いているのか否か、ひとつの試金石になるでしょう。もし向いているようなら、つまり大きな苦痛を感じずにできるようなら、うまく使いましょう。もし向いていなくても、つまり実行に多大な苦痛を感じるようでも、悲観することはありません。向いている人を「外部資源」として協働すればいいのです。万能の天才はさほどたくさんいるわけではありません。我々はネットワークの多様性を活用すべきです。
読後に、少し明るい気分になる良書です。
『マンガ孫子・韓非子の思想』
孫子関連ではたくさんの本が出版されていますが、最初に読むべきお勧めが本書です。最大の理由は、マンガなので読みやすいこと。つまり、孫子が示している状況や文脈を瞬時に理解できることです。
内容によっては、絵で示すのは単位面積あたりの情報量を大きくできるので効率的です。簡潔に書かれた孫子のエッセンスを素早く概括するいい方法かもしれません。孫子の兵法から引用された数々の名句を理解する一助にもなるでしょう。
研究者の解釈や解説と一緒に読むに越したことはありませんが、マーケターがひと通り一般教養として知っておくには十分だと思います。
しかも、東洋リーダーシップの手引きとも言える韓非子も同梱なので、ちょっとお得です。